黒猫眠り姫〔上〕[完]
「じゃ、初恋もまだ?」
「あー初恋ならしたよ。」
「えっ?」
その途端湊がご飯だよと言ったから
キッチンに行く。
「行こうよ、桐?」
「おお。(初恋はあったのな。)」
「桐?何ぼけっとしてるの?」
「桐のおかず食べちゃうよ?」
「駄目だから。俺のおかずっ。」
手で必死におかずを守る桐に笑ってしまった。
「桐、必死すぎ。」
「だって、俺のおかずが・・・」
「食べないよ。」
「ふぅ~。」
「早く席につきなよ。」
と湊は呆れたように言う。
「おお。」
パクパク口におかずを入れていく桐
はまだ根に持っているらしい。
「もう食べないって言ったのに・・」
「鈴だとわからんよ。」
「桐落ち着いて食べたら。」
と湊がご飯を綺麗に口に運ぶ。
「湊って食べ方綺麗だよね。」
「へっ?」自分に話題を振られて驚いたのか
以外にもそんな声。
「そうか?」
気にもせず、味噌汁を啜る桐。
「う~ん。何か綺麗だなと思って。」
「まぁ、こいつ顔もカッケーかんな。」
「そういえば、かっこいいね。今日も
声掛けられてたし、彼女いないの?」
ふと思ったことを口にすると、
桐も湊も気まずそうな顔をする。
知らないってこういうことなんだ。
私は、知らないうちに湊に悲しい
思いをさせていたんだ。