黒猫眠り姫〔上〕[完]

「じゃ、初恋もまだ?」

「あー初恋ならしたよ。」

「えっ?」

その途端湊がご飯だよと言ったから

キッチンに行く。

「行こうよ、桐?」

「おお。(初恋はあったのな。)」

「桐?何ぼけっとしてるの?」

「桐のおかず食べちゃうよ?」

「駄目だから。俺のおかずっ。」

手で必死におかずを守る桐に笑ってしまった。

「桐、必死すぎ。」

「だって、俺のおかずが・・・」

「食べないよ。」

「ふぅ~。」

「早く席につきなよ。」

と湊は呆れたように言う。

「おお。」

パクパク口におかずを入れていく桐

はまだ根に持っているらしい。

「もう食べないって言ったのに・・」

「鈴だとわからんよ。」

「桐落ち着いて食べたら。」

と湊がご飯を綺麗に口に運ぶ。

「湊って食べ方綺麗だよね。」

「へっ?」自分に話題を振られて驚いたのか

以外にもそんな声。

「そうか?」

気にもせず、味噌汁を啜る桐。

「う~ん。何か綺麗だなと思って。」

「まぁ、こいつ顔もカッケーかんな。」

「そういえば、かっこいいね。今日も

声掛けられてたし、彼女いないの?」

ふと思ったことを口にすると、

桐も湊も気まずそうな顔をする。

知らないってこういうことなんだ。

私は、知らないうちに湊に悲しい

思いをさせていたんだ。



< 155 / 344 >

この作品をシェア

pagetop