黒猫眠り姫〔上〕[完]

「ごめん。聞いちゃいけなかったね。

大体、私がここにいる時点いないって

気づくべきだった。」

「・・・そうだよなっ。鈴のドジ。」

無理に明るく振舞う桐を見ると心が、

苦しくなった。分かっているつもりで

も見えないのは君の心だったんだと

思い知った。湊はいまだに顔を曇らせた

まま、箸を机に置く。

桐は、今までになく必死そうに場を和ませる。

この上なく申し訳なく思った。

湊に対して、桐に対して、

申し訳なくて仕方なかった。

拾ってもらった上に、優しくしてもらった。

ご主人様が悲しそうな顔をしていた。

この時初めて、湊が遠くに感じた。

自分が一番バカだった。

でも、分かったのは湊が彼女と言う

言葉に怯えていたこと。

何となく自分と重なって見えた。

分からないけど、自分に怯える私と

どこか似ていたような気がしたんだ。

「ごめん。ちょっと、頭冷やしてくる。」

そう言うと湊は玄関から出って行った。

「私、考えもなしに湊悲しませた。」

「・・鈴・・・・。」

「湊・・ごめんなさい。」

「言えないのは湊が弱いからなんだ。

あいつを見放さないでやってよ。

まだ。言えねぇーけど、頼むから、

湊を一人にしないでくれ。」

顔を歪ませて苦しそうに言葉を

吐く桐はやっぱり湊の親友なんだと

思った。

私と湊。

壁があるのは当然。

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