黒猫眠り姫〔上〕[完]
前にもあったけど、小さく見えて、瞳の
奥があの時みたいに冷たくて、暗くて、
寂しそうだった。
湊。
私は湊のこと安心させたり出来ないのかな。
湊の心を癒せたらいいのに。
私なんかじゃ、癒せないのかな。
「何で湊が謝るの?」
「・・・鈴?」
見上げるように見た湊の瞳が自分と重なって
痛かった。
「湊は何にも悪くない。」
「・・・・・・・・・・」
「悪いのは私だから。湊は謝っちゃ嫌だ。」
「・・・・鈴?」
「何にも知らなくていい。
湊の今が知れればいい。湊が傍に居てくれれば
それ以外に何にも知らなくていい。
今の湊が湊だから。」
「・・・鈴っ。」
「嫌だよ。湊。湊が居なくなったら嫌だよ。」
「居なくならないよ。ただ、空気が
吸いたくなってね。」
「・・・・湊ぅ。」
「その言葉を信じるよ。」
「ホントに?」
「鈴を嫌いになんてならないよ。
捨てるなんて絶対にしない。鈴は、傍に
居てくれるんでしょ?」
「居るよ。湊の傍に居る。」
「それなら、平気だよ。」
「平気?」
「もう辛くない。思い出すのは痛いけど、
鈴が傍に居てくれれば辛くない。」
「私?」
「鈴の言葉が救いなんだよ。」
「??????」
「鈴が居ることが一番安心する。」
「そうなの?」