黒猫眠り姫〔上〕[完]
「そうだよ。」
「わかった。私、待ってるからね。
大丈夫だからね。湊のこと気長に待つから。」
「ふはは。この前もこんなことあったね。」
「うん?」
「この前は逆だったけど、鈴に助けられたよ。」
「私、何も出来なかったよ。ホントは、湊に
何て声をかけたらいいか分からなくて、それでも、
湊の辛そうな顔見ると、帰ることなんて出来なかった。」
「・・・・・・・」
「でも、一番怖いのはね湊がこのまま
帰ってこないんじゃないかと思った。」
「居なくならないよ。それに、来てくれた。」
「湊は優しすぎる。」
「優しい?」
「湊のこと心配してきたのに慰められた。」
「ふはは。」
「笑うんだ。」
「はははっ。」
「でも、良かったよ。もう笑ってくれないのかと
思ったから。」
キュンと胸が痛くなった。
湊の笑った顔がまた見れたことが嬉しくて
仕方ない。
「・・・・鈴。」
そう呼ばれた瞬間、湊に抱きしめられた。
その暖かさに脳が麻痺する。
この暖かさが体に身についてしまっている。
この暖かさが手放せなくなっている。
この暖かさはいつも湊がくれる。
この暖かさは湊の温もりを感じられる。
この暖かさが無かったら私は人の温もりを
知らずにいただろう。