黒猫眠り姫〔上〕[完]
「湊いい匂いする。」
「そう?」
「うん。香水つけてる?」
「うん。シトラス系できつくないのを
見つけたからね。」
「へ~。この匂い好き。」
「そっか。鈴は香水つけてる?」
「つけてないよ。」
「そうなんだ。」
「うん。」
「鈴。もうすぐで夏だね。」
「うん。」
「お出かけたくさん出来るといいね。」
「うん。」
「鈴は、あんまり外に出かけたりはなかったの?」
「うん。夏はとくに出かけたこと無かった。」
「そっか。」
「仕事大丈夫なときでいいからね?」
「うん。頑張るよ。」
「無理しなくていいからね。」
「鈴に心配されるなんて思わなかった。」
ふうっと時々風が吹く。
静かな公園のベンチ上。
湊が、いつもよりずっと近くに居た。
時々聞えてくる心音は湊のものだと
すぐにわかるほど近い。
「湊なんか無理しそうだし、
寝不足なのよく分かるもん。」
「そう?」
「寝なきゃ駄目だよ。」
「ちゃんと夜は寝てるよ?」
「でも、起きるの早いじゃん。」