黒猫眠り姫〔上〕[完]

「湊いい匂いする。」

「そう?」

「うん。香水つけてる?」

「うん。シトラス系できつくないのを

見つけたからね。」

「へ~。この匂い好き。」

「そっか。鈴は香水つけてる?」

「つけてないよ。」

「そうなんだ。」

「うん。」

「鈴。もうすぐで夏だね。」

「うん。」

「お出かけたくさん出来るといいね。」

「うん。」

「鈴は、あんまり外に出かけたりはなかったの?」

「うん。夏はとくに出かけたこと無かった。」

「そっか。」

「仕事大丈夫なときでいいからね?」

「うん。頑張るよ。」

「無理しなくていいからね。」

「鈴に心配されるなんて思わなかった。」

ふうっと時々風が吹く。

静かな公園のベンチ上。

湊が、いつもよりずっと近くに居た。

時々聞えてくる心音は湊のものだと

すぐにわかるほど近い。

「湊なんか無理しそうだし、

寝不足なのよく分かるもん。」

「そう?」

「寝なきゃ駄目だよ。」

「ちゃんと夜は寝てるよ?」

「でも、起きるの早いじゃん。」
< 163 / 344 >

この作品をシェア

pagetop