黒猫眠り姫〔上〕[完]
「膝痛くない?」
「痛くないよ?」
「それならいいんだ。」
「湊ってホント心配性だね。」
「そうかな?」
「でも、そうやって気にかけてくれるとこ
いいと思う。」
「ふはは。そう?」
「私は気づいてあげられないと思うんだ。」
「鈴は鈍感だもんね。」
「うん。鈍感なのか良く分からないけど、
そういうのに鈍いのはわかる。」
「でも、そういうとこ可愛いと思うけどな。」
「可愛くないよ。」
「はは。そこは、認めないんだね。」
「私、ナルシストじゃない。」
「でも、ホントに可愛いのにな。」
「湊って懲りないね。」
「誰かに鈴を連れて行かされそう。」
そう呟く湊は、無表情で寂しくなった。
どこにも連れ去られたりしないのに。
「誰にも連れ去られないよ。湊が私の
ご主人様でしょ?」
「桐に連れ去られそう。」
「桐は、友達だもん。」
「そうだね。ごめんごめん。」
「湊の心配が取れてないもん。」
「誰のとこにも行かないでよ鈴。」
そう言った湊は、今までで、一番切なそうな
顔で私に呟いた。
「湊のところが私の居場所だもん。
やっと見つけた私の居場所なんだもん。
どこにも行きたくないし、湊が居ないなんて
考えられないよ。誰の傍に居たって湊が、私の
一番だもん。」