黒猫眠り姫〔上〕[完]
猫みたいな私だと二人は言う。
だけど、ホントに猫だったら良かった。
猫だったらもっと可愛かっただろう。
私みたいに素直じゃないわけではなく
きっと素直に湊や桐に懐いて、
可愛いって思われて、最高に幸せで、
心なんて持たなくてすんで、
気ままに甘えて気ままに突き放す。
それが出来たんだろう。
私はそれがうまく出来ない。
甘えることが怖くて、
自分が突き放される前に突き放して。
ホントに可愛くない。
そんな可愛くない私を湊は拾ったんだよ?
猫を飼ってみたいとかいいながら、
ホントは見捨てられなくて自分に
似てるっていいながら拾ったんだよ。
そんな優しくされたらもっと猫に
遠ざかるよ。
心だっていらないって思ってたのに
湊のせいでだんだん気づき始めてる。
悲しいも寂しいも嬉しいも楽しいも。
もう離れられないじゃん。
私に居場所が出来ちゃったじゃん。
こんな私に湊が居場所をくれた。
湊には何気ないことでも、私は
嬉しくて嬉しくて仕方ないんだ。
「湊ありがとう。」
空に溶け込んだ声が、
どうか湊に伝わりますようにと
願った。
たくさんのありがとうを
君に伝えたいんだよ。