黒猫眠り姫〔上〕[完]

猫みたいな私だと二人は言う。

だけど、ホントに猫だったら良かった。

猫だったらもっと可愛かっただろう。

私みたいに素直じゃないわけではなく

きっと素直に湊や桐に懐いて、

可愛いって思われて、最高に幸せで、

心なんて持たなくてすんで、

気ままに甘えて気ままに突き放す。

それが出来たんだろう。

私はそれがうまく出来ない。

甘えることが怖くて、

自分が突き放される前に突き放して。

ホントに可愛くない。

そんな可愛くない私を湊は拾ったんだよ?

猫を飼ってみたいとかいいながら、

ホントは見捨てられなくて自分に

似てるっていいながら拾ったんだよ。

そんな優しくされたらもっと猫に

遠ざかるよ。

心だっていらないって思ってたのに

湊のせいでだんだん気づき始めてる。

悲しいも寂しいも嬉しいも楽しいも。

もう離れられないじゃん。

私に居場所が出来ちゃったじゃん。

こんな私に湊が居場所をくれた。

湊には何気ないことでも、私は

嬉しくて嬉しくて仕方ないんだ。

「湊ありがとう。」

空に溶け込んだ声が、

どうか湊に伝わりますようにと

願った。

たくさんのありがとうを

君に伝えたいんだよ。
< 174 / 344 >

この作品をシェア

pagetop