黒猫眠り姫〔上〕[完]

「鈴の寝顔の方が可愛いと思うけどなぁ。」

自然と言えるところがすごいと思う。

「最初は警戒心強くて寝れないのかなと

思ったんだけどね。」

「そんなこと思ってたんだ。」

「パソコンとにらめっこばかりしてるだけ

じゃないからね。」

「そうかな?私の中の湊ってパソコンと

にらめっこしている感じが強いんだけどな。」

「それは、たまたまだよ。」

「普段の私生活も一緒に暮らしてみないと

分からない人だと思う。」

「そうなのかな?」

「でもね、湊って誤解されやすいんだと

思うんだ。」

「それってどういう意味?」

「綺麗な顔立ちで顔ばかり見ている人には、

湊の良さは伝わらないなって思っただけ。」

「はは。鈴照れてる?」

「人のことあんまり褒めたことない。」

「でもさ、そうやって鈴が見てくれてるって

嬉しいね。」

「ホントに?」

「うん?」

「ホントに嬉しい?」

「嬉しいよ。ずっと前から鈴みたいに

見てくれる人が居ないって思ってたから。

だから、鈴が言ってることは信じられる。」

その言葉はすごく嬉しいって湊は知ってる?

知らずに言ってくれているなら湊は、私を

嬉しくさせる天才だ。

湊の言葉に冷え切った心を溶かす温もりが

ある気がする。
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