黒猫眠り姫〔上〕[完]
「鈴の方が優しいよ。」
「そんなことない。」
「鈴だって優しいんだよ。
自分を否定しちゃ駄目だよ。」
「・・うん。」
「否定すればいいなんて思って、
また自分を重荷に耐えさせるようなこと
するといつか鈴が駄目になる。」
その言葉には重さがあった。
いつか自分を駄目にさせることを
知りながらもつい否定してしまう。
それが私の悪いところだ。
でも、耐えられなくなった後に
待っているのは駄目になった
自分なんだ。
湊はそれを私に教えてくれたんだ。
「駄目になりたくない。」
「それなら、もっと気楽に考えれば
いいんだよ。自分を追い詰めたりするのは
もっと深く考えている証拠だから。」
さっきとは違う目。
いつもみたいに笑ってくれた湊に
私はいつもどれだけ助けてもらったんだ。
気が付くといつも湊は私の変化に
気づいて大事な言葉をくれる。
その優しさを当たり前だと思いたくない。
もっと価値があって、
世界中でたった一人だけだ。
私のことをそこまで心配してくれて、
分かって傍にいてくれて、
弱さを受け入れてくれて、
欲しい言葉を言ってくれて、
何よりも大切な人。