黒猫眠り姫〔上〕[完]

笑ってもいいよ。

笑ってもいいからそれ以上の幸せは

ないから。

「今度の休みはドライブでもしようか?」

その提案で嬉しくなって笑った私に

湊も微笑んでいた。

「暇で仕事がないときならいつでもいいんだよ?」

「それまでには、終わらせるよ。」

「それで居眠り運転は駄目だからね。」

「さすがにそれはないよ。」

「ちゃんと寝て夕方ぐらいとかでもいいからね。」

そう言った途端ニコニコ笑いうんと頷く湊。

そんな湊につられて笑う。

休日を楽しいとかそう思ったのは、

初めてだと思う。

そんな風に思える自分になったのも

変化しているからだろう。

休日は湊といつもより長く居れる。

そんな休日がまだまだ終わってしまわないよう

に願う。それは、難しいことなんだろう。

それでも仕方ない。

願わずにはいられない。

何だか、気分もだいぶ晴れた今日は

よりいっそう湊と居る時間が短く

感じてしまって可笑しい。

「ドライブなんて何処行くの?」

そう聞くと湊はにこっと笑って、

秘密と言う。

そんな謎めいた答えが返ってくるなんて

思わなかった。

「秘密って気になる。」

「そっちの方が楽しさが残ってるでしょ?」

そう言う湊は笑っている。

「楽しみ残るの?」

「うん。残るでしょ?」

「そうかも。」

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