黒猫眠り姫〔上〕[完]
「今日は、仕事もほとんどなかった。
こんなに休めて後が怖いね。」
「大丈夫だよ。湊ならすぐ終わっちゃう。」
「いろいろ悩んだりするんだけどね。」
「作品ってどんな時に浮かぶもの?」
「どんな時だろうね?」
「湊?」
「でもね、最近は調子いいんだ。」
「そうなんだ。良かったね。」
「うん。良かったのかな。」
「なんで?嬉しくないの?」
「嬉しいよ。でも、何か作品で
悩んだりするのも多い方がいい作品
が出来るからね。」
「そうだね。でも、湊が仕事している
ところ見るの結構好きだよ。」
「そう?」
「うん。頑張ってるなって思う。
真剣だったりいろいろな顔が見れる。
だから、好き。」
「へ~知らなかった。」
その夜は話がたくさん出来た。
もしかしたら今までで、一番湊と
話しているのかもしれない。
そんな時間が何だか嬉しい。
湊が話している横顔とか、
見てるとすごく安心する。
ちゃんと話を聞いてそうだねって
言ってくれたりして話しやすい。
湊ってそういう人。
マイペースで飲み込まれていきそうな
雰囲気。でも、人の表情をすごく
見ていて、どんな些細なことでも
気に掛ける優しい人。