黒猫眠り姫〔上〕[完]
「湊?」
「何?」
「ううん。ただ、呼んだだけ。」
「鈴。」
その声がどこか寂しそうで手が勝手に
動いて言うことを利かない。
気づくと湊を後ろから抱きしめていた。
寂しそうで小さいと思っていた背中は
意外と大きかった。でも、やっぱり、
どこか華奢で切なくなる。どうして、
こんなにもやりきれなくなるのか、
わからない。けど、ただひとつ言える
ことそれは、彼が自分と同じような
闇を抱えているということ。
苦しくなる心とは裏腹に湊は、不安そう
に尋ねてくる。
「鈴?」
その声を聞くと自分も不安になる。
一体彼は、どれぐらい辛い思いをして
こんなにも儚いのだろうか?
誰が彼をこんなふうにしたのだろうか?
聞きたいことはたくさんあるのに言葉に
することが出来ない。