黒猫眠り姫〔上〕[完]
まだ、聞いちゃいけない気がして、
湊が話してくれるまで待っていなくては
いけない気がした。
同じ痛みを知ってるからわかった気がする。
なんで、見ず知らずの私を拾ってくれたのか
も気になっていたけれど、今なら少しだけ
分かる気がした。
背中越しだから湊の顔がどうなってるか
わからない。だけど、きっと困った顔を
してるんだろうな。そんなことを思って
離そうとしたら、湊が話した。
「鈴?どうかした?
何かあったの?でも、初めて甘えてくれた
みたいで安心した。」
「何で、拾ってくれたの?」
「鈴が、かわいかったから。」
こんな場面で冗談を言える彼は、
やっぱりマイペース君だ。
「でも。」
「鈴?それ以上にね、鈴みたいに
心の綺麗な子がそばにいてくれたら
って思ったんだよ。」
「綺麗なんかじゃないよ。」
「鈴は、綺麗だよ。」
そういうと彼は、自信を持って言った。