黒猫眠り姫〔上〕[完]

時刻は11時半。

おなかも空いてきたころだ。

湊たちからは相変わらず何の音沙汰もなく。

私のことなんか忘れてるのかななんて思って

しまう。そうだったらすごく寂しい。

そう思っても仕方ないから電話を掛けることに

した。しかしさっきから変な連中がしつこい。

電話番号教えて?だとかこれから遊ばない?

とか一人になった途端はなしかけられる

量も増えて電話をしたくても出来ない。

近づいて隣に座ってくる人もいた。

チャラそうに何がしたいんだ。

さっきから無視をしているけど、

相変わらず減りもしない。

仕方なくトイレの方に移動して

電話を掛ける。

湊のケータイ。呼び出しのコール音が

やけにドキドキした。

「・・・鈴?」

その声を聞いた瞬間落ち着きが戻る。

「今何してるの?」

忘れてたのかな?と思いながら聞く。

「今ちょうど鈴の服をみんなで選んで

買ってたところ。みんなけっこう苦労してたよ。」

「ふふ。そうなんだ。」

「鈴は髪どう?切り終わった?」

「うん。だいぶ前に。」

「そっか。待ってた?」

「ううん。」

「そう。それじゃ今から迎えに行くね。

さっきの店でいいのかな。」

「あのね、今はそこじゃなくてね、

近くの『time』っていうカフェがあるんだ

けど。」

「そこに居るの?」

「うん。」

「わかった。今からそこに行くから待っててね。」

そう言うと湊は電話を切った。
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