黒猫眠り姫〔上〕[完]
湊も気づいていたんだろう。
私はわかりやすいのかもしれない。
二人には私の気持ちがすぐにわかってしまうんだ。
「やっぱりみんなはここにいて?」
はっと気づく、さっきの雑貨屋は女の子が行く
ようなお店だ。ただでさえ目立つ4人。
そしてどうやら女の子に興味のない4人を
連れて行くには正直よくないと思う。
「ハァ?何言ってんだ!?また、変なのに
捕まるよ?」
眉間に皺を寄せて言う桐。
「大丈夫。すぐそこだし何かあってもほら
あそこに交番あるし大丈夫だよ。」
「そんなに俺らが一緒なのが嫌なのか?」
全くどうやったらそんなふうに思うんだ。
「どうして?」
そう言うと困ったようにする桐が言った。
「さっきから別行動ばっかりでつまんねぇ
のかなって思って。」
確かに別行動になっている。
そう思っても仕方ない。
気まぐれでわがままでみんなに迷惑
ばかりかけっぱなし。
私がみんなを困らせているんだ。
「私、団体行動なんて初めてなんだ。
だから、つい自分ひとりのつもりになっ
ちゃうんだ。」
そう言うと湊がにこっと笑った。
「鈴?今は一人じゃないんだよ?
行きたい場所があるなら言ってくれれば
みんな一緒に行くこともできるんだよ?
だから、わがまま言ってるんだって
思わないで、提案したって思えば
いいんだよ?」
優しい湊はいつも私の心を見通す。
今までの自分が恥ずかしいぐらい。
「つまんないなんて思ってないよ。
みんなと一緒に買い物できたり、
すごく楽しいよ。いろんなところ
にもっと行きたい。
私、初めてこんなふうに過ごせた休日
なんだ。今までの中で一番人間らしい
休日になったと思う。」
自分の気持ちを口にすると心は何だか
スッキリした。