黒猫眠り姫〔上〕[完]

声に出来ない言葉に出来ないこの声を

初めて言った私をみんなはどう思うだろう?

どうせならうんざりしてくれてもいい。

自信なんてあるわけもないいんだ。

みんなが私を受け止めてくれる自信が

ないから情けないほど否定してしまったんだ。

「鈴。」

さっきからずっと私を呼ぶ湊。

気づいてても返事がうまく出来ない。

「何?」

うずくまった体を少しばかし起こして

前を向く。

そこには、4人がしゃがみ込みながら

私の傍にいて心配そうにしている姿だった。

また泣きそうになった。

言葉が出てこなくて、不細工な泣き顔よりも

ずっと衝撃的でポカンとなる。

「不細工じゃないじゃん。」

と満が安心した顔で笑う。

「可愛いよ。今まで見た誰の泣き顔よりも

ずっと鈴が可愛い。」

尚の言葉に涙がまた頬をつたう。

「もう鈴は飼い猫だろ?

そんな寂しそうな顔ばっかすんな。」

頭をポンポンと撫でる桐。

「いつだっていいよ。

鈴が泣きたくなったら一緒に居て

あげるし辛くなったら一緒に悩めばいい。

一緒に居れば笑って楽しいって思ったり

も出来る。鈴の居場所は俺のところにあるから。」

ボロボロ落ちる涙に止まることなんて

知らない。そんな私の頬を流れる涙を

湊の冷たい手が触れる。

シャツで拭った涙は湊のシャツを

濡らした。
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