黒猫眠り姫〔上〕[完]
「・・・っ・・そ・ぅシャツ・・」
湊シャツが濡れちゃうよ?
言いたくても言えない。
涙が止まると湊はニコッと微笑んで
止まったねと言った。
こんなに私を見てくれる人に会った
以上もう前みたいな考え方は出来なくなる。
「私がどっかふらふら行かないように
見ててね?」
そう言うと湊は私の髪を撫でながら、
「当たり前だよ。鈴のご主人は僕だからね。」
そう言った。
「これで、学んだな。
鈴は思っている以上に自由人だな。」
桐が偉そうにそう言う。
「桐のくせに偉そう。」
嫌味っぽくそう言うと桐はしょぼくれた。
カラカラに乾いた空のように、
もう充分泣いた。
人前なのに全然後悔してない。
それはきっと、みんなが受け止めてくれた
からだと勝手に考える。
ビルの隙間から太陽がチラつく。
眩しいそれに目眩がしそうだ。
店の窓に映る私は太陽が全く似合わない。
ふとみんなを見ると太陽の光が
よりいっそう輝いて見える。
私にないものをみんなは持っている。
うらやましくも思うそれが今はまだ
よくわからない。
それでも、私にとっての光は、
そこにあった。
暗い闇に彷徨う私には、たった一つの
道筋でひかりだった。
世界はいつだって裏切りはしないんだ。
そこに必ず光は訪れる。
信じ切れなかった私は、過去に縛られた
あとがずっと怖くて目を逸らすしかなかった。