黒猫眠り姫〔上〕[完]
「ごめんっ。・・」
頭に駆け巡るものがどうしようもなくさせる。
今日は、いつもより泣き虫で泣いてばかりだ。
こんな私がみんなを困らせている。
もう進んでいる時間を戻すことは出来ない。
「鈴。もう苦しまないで。
一人で背負うには大きすぎるんだよ?」
湊の声が隣から聞える。
「私・・どうしたらいいのかわからないよ。」
何よりも自分がわからなくなる。
今までどうやって来れたんだろう?
相当な覚悟も今じゃ薄れてわからない。
ただ、あの店に入りたくないわけじゃない。
いつか入りたい。
泣き虫で弱虫の私にはまだきっと涙を
堪えきれない。
だから、もう少し。
ちっぽけな心が強くなれたその時
きっと今までよりもずっと心が
軽く店内の中に入れるだろう。
お母さんとの思い出が深いだけ、
苦しさが募る分、楽しさも少しだけ
残ってる。
そんな場所を大切に出来るように
忘れることのないようになりたい。
そう思えるようになったのは、
きっと湊に会えたから、桐と友達に
なれたから。
今までの出会いが今の私にはなくては
ならないものだった。
何か一つでも変われば今の私も少し
変わっていたに違いない。
大人になりきれない私には
大きな出会いだった。
小さな自分がバカらしく
思えた。
それが答えだ。