黒猫眠り姫〔上〕[完]

「ごめんっ。・・」

頭に駆け巡るものがどうしようもなくさせる。

今日は、いつもより泣き虫で泣いてばかりだ。

こんな私がみんなを困らせている。

もう進んでいる時間を戻すことは出来ない。

「鈴。もう苦しまないで。

一人で背負うには大きすぎるんだよ?」

湊の声が隣から聞える。

「私・・どうしたらいいのかわからないよ。」

何よりも自分がわからなくなる。

今までどうやって来れたんだろう?

相当な覚悟も今じゃ薄れてわからない。

ただ、あの店に入りたくないわけじゃない。

いつか入りたい。

泣き虫で弱虫の私にはまだきっと涙を

堪えきれない。

だから、もう少し。

ちっぽけな心が強くなれたその時

きっと今までよりもずっと心が

軽く店内の中に入れるだろう。

お母さんとの思い出が深いだけ、

苦しさが募る分、楽しさも少しだけ

残ってる。

そんな場所を大切に出来るように

忘れることのないようになりたい。

そう思えるようになったのは、

きっと湊に会えたから、桐と友達に

なれたから。

今までの出会いが今の私にはなくては

ならないものだった。

何か一つでも変われば今の私も少し

変わっていたに違いない。

大人になりきれない私には

大きな出会いだった。

小さな自分がバカらしく

思えた。

それが答えだ。
< 242 / 344 >

この作品をシェア

pagetop