黒猫眠り姫〔上〕[完]
「鈴?」
湊の心配そうな顔に胸が痛んだ。
「湊?桐?尚?満?」
ニコッと微笑みながら空を見上げる。
「まだ、変わり続けているからね、
空みたいに私の人生にもきっと
晴れも曇りも雨もあって当然なんだ
と思う。変わりのない人生なんて
人生って言わない。だから、私
らしく生きるよ?あの店にも今度
必ず入れるようになってる。
みんなのおかげで全然軽くなったよ?
不思議。今まで解決するのにどれだけ
時間掛かってたんだろう。」
「時間掛かってもいいじゃん。
鈴がやりたいように鈴の人生なんだから
自由に生きればいい。
何かに縛られることなんてしなくて
いいんだから。」
満の言葉が胸に染みた。
「湊?覚えてる?
湊に出会った時も私、すごい自分
追い込んでた。
何にも考えてないのに
逃げてきて、湊の言葉もろくに
聞かないでほっといてなんて
言ってほんとはね、湊の優しさに
動揺してたんだよ?」
「えっ?」
「ほっといてって言えば、
私に構わなくなると思ってた。
でも、湊は逆だった。
そっけなくすればするほど
優しくて今までにはない人だと
思ったんだ。」