黒猫眠り姫〔上〕[完]

「鈴は強いよ。」

湊はニコッと笑い空を見上げる。

「自分のことを悪く言う癖は治ってないけど、

少しずつ前を向けてる。だから、きっと大丈夫。

その強さがいつまでも続く。鈴は優しいって

言ってくれるけど俺のほうが鈴よりずっと

弱い人間なんだよ。」

寂しそうに空を見上げる湊に心が曇る。

「いつまでも過去に縛られてるのは俺自身も

一緒なんだ。ただ、鈴はまだ前を向けている。

もう暗闇の穴に閉じ込められることはきっと

ないからだから。」

「湊も一緒なら私が湊を待ってるから。

いつでも傍に居るから。私よりもずっと

辛い思いしてるのは湊も一緒でしょ?

無理なんてしなくていい。

私は頑張れるから湊の近くで必ず

自分らしく生きるからだから一緒に

頑張ろう?」

胸にいっぱい溢れた言葉を伝えたい。

「私、湊の笑顔も桐とのお話も、尚の

優しさも満の強さもすごく好き。

自分にはないものだからすごく羨ましい。

でも、頑張れるの。」

晴れた空に心も晴れ渡る。

「もう、後ろ向いて歩いてられないね。

人間不信のとこも直したいけど、

まだ等分無理だから自分のペースで

頑張る。こうやってたくさん泣いて

聞いてもらってスッキリした。」

心からみんなに感謝をしてる。

昔から人一倍泣き虫だった。

でも、もう泣かないんだって

思ったときからずっと我慢して

限界も通り過ぎて誰にも

言えなかった。

この悲しみを胸にしまいこんでいた。

涙の代わりに出るのはいつも自分を

守る言葉だった。
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