黒猫眠り姫〔上〕[完]
何も出来ない私にはいつもどこか不安だった。
言葉もうまくない私は人によく勘違いされた。
それもだいぶ慣れてしまえばどうでもよくなる。
頭の中では否定しても言葉によって伝えられない。
そんな自分が大嫌いだった。
「鈴のそういうところ好き。」
湊はまっすぐ私を見る。
「私も好きだよ?」
湊は苦笑いをして桐に何か言っている。
「でも、鈴の初恋話気になる。」
それはいきなりの言葉。
それを言ったのは予想外の人。
「満何で知ってるの?」
私が初恋を聞かれたのは桐。
満にはそんな話一言もしてない。
「好きとかの話じゃないよ。
誰かを好きになったりはきっと一度も
ないと思う。こんな性格だし。」
そう言うと尚がいきなり言う。
「鈴は自分の魅力に気づいてないだけだよ。
そういうとこ心配だな。変な人について
行かないでね?」
それに不思議に思った。
「魅力?」
「意外と近くに居るかもしれないね。」
湊がニコリと笑う。
「そうだね。でも、私はきっと気づけないかも。
鈍感だってこの前言われたばかりだし。」
「そうかもな。」
と桐は豪快に笑う。
「桐は女の子の扱い酷いと思うけど。」
「鈴にはめちゃくちゃ優しいけど。」
「自分で言うところが可笑しい。」
ふんと鼻を鳴らして桐が拗ねる。
「私ね、桐みたいな人も好きだよ?」
と機嫌が直るかと思って言ってみる。
そうすると顔を赤くする桐。
「今日は暑いな。」
とジュースをがぶ飲みする。