黒猫眠り姫〔上〕[完]
耳を塞ぐ。目を閉じる。
「離婚成立?何年この日を待ち続けた
と思ってるの。あの子も大きくなったん
だからもう我慢する必要はないわ。」
「ああ。あの子は、いつも黙ってた
からな。だから、すき放題にさして
もらってたし自由は与えてやらなきゃ。」
耳をまた澄ませる。
「鈴?」
桐が庭にやって来た。
「何?」
「何で泣いてるの?」
「えっ、・・・・」
気づかないうちに涙が流れていた。
「泣いてない。」
「泣いてるじゃん」
両親の話し声が聞こえた。
「あの子も何も言わないんだから
居ても居なくても一緒よね。」
「そんな子というな。」
桐の顔が強張る。
「鈴?何で何にも言わねんだ?」
「言わなくていいの。」
「それじゃ、伝わんねぇじゃん。」
「いいよ。それでも。」
「よくねぇ。俺が言う。」
「いい。言ったって邪魔にしか
思われない。だったら言わない方
が傷つかないから。」
なんともやりきれないというふうに
桐が顔を歪めるのを見て心が痛くなった。