黒猫眠り姫〔上〕[完]

「そうだといいな。」

私がそう言うと湊はニコッリと笑いスーッと

手を差し出し手を繋ぐ。

「鈴。みんなもうすぐ来るって。」

手を繋ぐと意外と大きな綺麗な手が

ふわっと包み込み何だか不思議な感じが

した。もう片方の手で湊に頭を撫でられる。

「猫ってどんな気持ちなんだろう?」

ふと思ったことを口にすると、

湊は考えてくれているようで、

少しの間沈黙が流れる。

その沈黙は変に嫌なわけでも気まずくなる

わけでもなくて、あたしの言ったことを

考えてくれていることが嬉しくて自然と

黙ってしまうわけで次に発する湊の声を

待ち遠しく待っている。

流れる時間の進みはゆっくり。

「やっぱり、生きてるからいろいろ思う

のかな。でも、どうしてそう思ったの?」

口を開くと湊らしい答えが返ってきた。

「ほら、あたしって猫なんでしょ?

だから、ちょっと猫の気持ちってどう

なんだろうって思って。」

変なこと言ってないだろうか?

「猫として見てたのは確かだけど、

鈴は鈴の気持ちで考えればいいんじゃないかな?」

湊の言葉って不思議だ。

魔法みたいにスーッと私の心に入り込んで

消えない。

「湊って言葉をうまく使えるって言うか

何か羨ましい。私には考えもしないことを

言えるんだもん。大人って感じで遠くに

感じる。」

ちょっと寂しさを感じながらそう言うと

湊は髪をふわりと揺らして言う。

「遠くに感じるんだ。何か寂しいね。

近くに居てもそう思われたら意外と

寂しくて変だね。」

髪に触れるとふわっとした湊の髪は

すごく綺麗で湊をすごく近くに

感じた。
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