黒猫眠り姫〔上〕[完]
ー湊saidー
居なくなった鈴をこれでもかってぐらい心配した。
鈴の心に残る人を気にすることよりも鈴は自分を
追い込んでいたことが何よりも心配だった。
出会った時から自分に厳しい子だというのは
分かった。だから、きっと人の心は痛いほど
分かるんだろう。でも、心配なんだ。
鈴は華奢で儚くていつもどこかに行ってしま
いそうで怖い。
その小さな体で背負いきれないような重い
者をずっと持ってきたんだ。
傍に居てあげたい。
鈴の心は見えなくて分からない。
でも、少しは信用してくれているのが
分かるから頑張りたい。
鈴を自分のようにはさせたくないんだ。
見つかった鈴は意外と何てことないよ
というように普通だった。
でも、気づいた。
小さな体で微かに震えていたのを。
いつも鈴は頼ろうとしてくれない。
寂しくなる。
何もしてあげられてない。
一緒に居て欲しいのは自分の方なんだ。
鈴を困らせるほど必要としているのは
自分だった。
気づくのが遅かった。
鈴は自分を弱いと言った。
でも、気づいてないけど鈴はずっと強い。
何もないのは自分の方だ。
前に踏み込めない俺を前に踏み出そう
そう言った。
その言葉に救われた。
誰かに言って欲しい言葉で、鈴が言ってくれる
ことで進めるきっかけになったんだ。
そんなことがあったから余計鈴を
必要としている自分に気づいた。