黒猫眠り姫〔上〕[完]
何で知ろうとしてあげないんだろう?
「湊は、意外と可愛いところあるよね。」
いきなりそんなことを言う鈴にちょっとびっくり
したけど、思い当たる節がない。
「そんなとこある?」
気分を紛らわすためだろうか?
「よくボーっとするし、寝顔も可愛いかったし
料理とか上手だし、可愛いなって思う。
マイペースなところは気が合うし一緒に居ると
すごく心地いいの。」
そんなことを言う鈴はニコッと微笑む。
笑顔が出来ないという鈴はホントにたまに
笑ってくれる。
その笑顔は心に打ちぬけるほど、可愛い。
だから、もっと笑って欲しい。
「可愛いか。男らしさは感じないの?」
ニコッとこちらも微笑みながら話す。
「感じるよ。だって、湊は紳士なんだもん。」
鈴の黒髪がさらっとなびく。
「紳士?」
鈴の髪に触れるとサラサラの髪が綺麗だった。
「うん。優しくて男の子なのわかってるから。
パソコンだって打ってる時はすごいなって思って。
好きなことを仕事にしているところとか、
かっこいいことだよね。」
普通にそんなことを言ってしまうから
驚く。
「褒めてくれるのは嬉しい。
そんなふうに言ってくれたのは鈴だけかな。」
過ぎるのは自分の思い。
昔から変わらない心で決めたこの仕事。
やり通すには一人だけでは駄目なんだと
いうこと。
それを知ってしまった今はけっこう、
仕事のことに誇りを持っている。
だから、そう言われると嬉しかった。
桐だけが見方でいてくれたこの仕事を
改めて好きになれた。