黒猫眠り姫〔上〕[完]
「湊のこともっと知りたい。
まだ何知らないかな?好きな食べ物とか。」
鈴の楽しそうな顔を見ると自分まで幸せになった気分。
「好きな食べ物ね、・・チョコレート?
コーヒー、あとスパゲッティは好きかな。」
好きなものあんまり人に言ったことがないため
考えてしまう。
「そうなんだ。チョコレートとコーヒーは
仕事のお供だしね。」
手を繋ぐ鈴の手は小さくて冷たい。
「他には聞きたいことない?
聞きたくなったらいつでも聞いてよ。
鈴だったらいつでも答える。
だから、聞いてね。」
鈴のこともあまり知らないけど、
まだいくらでも時間はある。
「うん。湊に聞く。
あとは何かあったかな?」
隣では考えている鈴。
青い空が包み込む空の下、
休日の昼下がり、
鈴と一緒に手を繋いだ
この時間がまだ終わりませんように
と思った。
いつもは、何もが通り過ぎてゆく
時間が早く終わればいい。
そう願って生きてた。
今まで何をしてても、時間だけは
長くて苦痛だった。
それなのに今は違う。
鈴と居ると時間は短くて
時間が過ぎていかないで
欲しいと思うようになった。
ちょっとずつ、君は大きく
なっています。
君は不安な顔で何を思っているのか
分からないけど不安なんていらないほど
今の時間が愛おしく思えるんだよ。