黒猫眠り姫〔上〕[完]

「湊って大人っぽいのかな?

何か外見はもっと冷たい人なのかなって

いうイメージがあったから、湊と居ると

新鮮なことがすごくいっぱいで時間の

流れて意外と早いのかなって思って

ちょっとだけもっとスローになってくれ

ないかなって思うんだ。」

何だか今日は鈴が素直に自分のことを

話してくれる。

だからなのか、今日はいつもより鈴

の言葉が伝わるたび鈴の表情を見てしまう。

クールなイメージの鈴が照れて言う言葉に

どれだけ可愛いって想っているかなんて

知らないだろうけど、無意識なんだろう。

そのしぐさにいつも惑わされるんだ。

可愛い顔して何気に残酷なお姫様だ。

「今同じこと思ってたよ。

時間ってこんなに早く進んでいたんだって

気づくともっと遅くになって欲しいって

僕も思うよ。」

鈴はふっと微笑むと顔をパッと明るくした。

「湊もそんなふうに思ってたなんて、

何だか嬉しい。遅くても早くても、

ずっと湊の近くでこんなふうに歩いていたい。」

華奢の白い腕が細くて心配になる。

「僕は鈴の傍に居るつもりだよ?

鈴の望みなら僕に出来ることなら

何でもしてあげたいとも思ってる。」

自分でも思うんだ。

マイペースなペースが少しずつ

ずれてはいないだろうか?

「湊っていつでも私の欲しい言葉を

言ってくれる。私は湊に湊の欲しい

言葉いえてない気がする。」

悲しそうな顔をする君も

笑って欲しいと想う。

「鈴の存在自体が僕の支えになって

るから充分だよ。」

こんな言葉で君は納得してくれるだろうか?

君の欲しい言葉になってだろうか?

もしも君にとってその言葉が欲しいものだった

ならこれ以上に嬉しいことはないだろう。

< 274 / 344 >

この作品をシェア

pagetop