黒猫眠り姫〔上〕[完]
「鈴?」
私の顔が曇ったせいか湊が心配そうに私
を見る。心配ばかりさせてホント湊には、
悪い気がする。
「うん?」
でも、不安を湊に話したって解決はしないし、
逆に湊を悲しませてしまいそうで何かを言う
つもりもない。
ただ、勝手に自分で不安になってるだけ。
この感情の変化に頭がついていかないだけ。
だから、知らないふり。
誰にもバレないだろうこの作戦は、
卑怯なのかもしれない。
「特に用はないよ。ごめんね?」
湊にこんなセリフを言わせる自分が
情けなく思えて仕方がなかった。
「そう?」
でも、顔には出さない。
「うん。ホントごめんね?」
ホントに申し訳なく思ってるらしい。
「大丈夫だよ。」
ただそう言うことしかできなかった。
「何々?」
と空気の流れを変えた桐に今は感謝。
ありがとう。心の中でそう呟いた。
「何でもないよ。それより、満は?」
そういえば、さっきから姿が見当たら
ないしケータイ持ってどこか消えたのは
覚えているから近くにはいるのだろうか?
「ああ。今用意?準備?してるよ。
もうすぐ来ると思うよ。」
桐の言葉にホッとした。
「帰ったのかと思ったよ。
そういえば、疲れるよね。
あそこにあるベンチにでも座ろう。」
足がガックンといきそうなほど、
詩に負担がかかる。
普段運動なんてしないし、
だいぶ動いたものだから足が悲鳴を
あげていたのだろう。