黒猫眠り姫〔上〕[完]
廊下の方に出て誰も居ないから困る。
どこ行ったの?
あたし置いてきぼり?
一人で廊下に立っているとダンディーな
おじさまが声をかけてくれた。
「お嬢さんこちらに。」
とりあえずついて行く。
いや、普通だったらついて行っちゃ
駄目だと思うけどこの人優しそう
どう見ても悪い人に思えなくて、
前を行くおじさまについて行く。
ついた場所は綺麗なお部屋で、
ゴージャスにシャンデリアが
きらりと輝く。
「お綺麗ですね。」
おじさまは傍で紅茶を入れてくれた。
何だかお嬢様になった気分だ。
「みなさまも用意なされてますので
もう少しお待ちしてください。」
そう言うとおじさまが部屋から
出ていってしまった。
綺麗なお部屋に取り残されたまま
特にすることもなく困った。
近くにある絵画に興味を持ち、
近づく。
いい匂いのする髪のせいか、
酔いそう。
フラフラ案内された椅子に座ろうと
思い近づくと、声が聞こえた。
「鈴?」
ビクンと肩が揺れる。
驚きすぎて声が出ないというのは
こういうことだと思う。
振り返らずにいると、
そういえば名前呼んだ?
と思い一瞬躊躇ったものの
振り返る。
そこにはスーツをカッコよく着こなした
湊がいて驚いた。
この上なく驚いて声が出ない。