黒猫眠り姫〔上〕[完]
「鈴、可愛いね。」
湊がにっこり笑い近づいてくる。
ドキンっと心臓が鷲づかみにされるぐらい
痛くなってぎゅっと心臓を抑える。
近づいてくる湊からはいい匂いが
香る。その匂いに近づきたくなる。
元々大人っぽくて紳士な湊は、
スーツを着るとホントに大人の
魅力を感じる。
「・・・湊?」
声が出たのは湊との距離が縮めれれた後、
湊の手がわたしの髪に触れる。
伝わるのは湊の温かさ。
ふわっとした温かさがその手から
わたしに伝わる。
胸が温かくなってホッとする。
この手にわたしはどうしようもないほど
安心して居心地の良さを確認する。
「あんまりこっち見ないで。」
湊がふわっと笑って照れ笑いをする。
湊の茶色に近い髪がサラサラとして
いて触りたくなる。
綺麗な顔立ちだからこれはモテるなと
思う。
「湊?」
不思議に思い湊に首を傾げる。
「鈴そんなに可愛いことしないで、
誰かに連れてかれそう。」
その瞬間、湊の匂いに包まれた。
胸の中に生まれる安心に似た
この感情。
湊の腕に包まれただけで、
わたしは幸せを感じる。
わたしは、この人に必要と
されてるんだって感じることが
出来るんだ。
「湊?」
この腕が離れてしまうのは、
すごく寂しく感じる。
まだぎゅってして欲しい。