黒猫眠り姫〔上〕[完]

黒いワンピースがヒラヒラしてくすぐったい。

「鈴、もうすぐみんな来るよ?」

いつだって冷静で少しぐらい焦ってくれた

っていいのに。

「うん。」

湊の腕から離れるのが寂しくなる。

まだその温もりに包まれて居たかったな。

湊は全然平気そうでわたしだけがと思うのは

嫌だから真っ黒に塗りつぶす。

ガチャリと開くドアの方に視線を向けると

そこには正装した桐と尚と満。

湊の言ってることが間違ってなくて

そんな湊を不思議に思った。

「鈴、なんか黒猫っぽいね。」

桐が頭を掻きながら見つめてくる。

「可愛いね。」

尚はさらっとそんなことを言う。

「お姫さんじゃねぇ?」

満はタバコをくわえたままで、

ちらっと湊を見た。

「あのこれどうしたの?」

何でこんなふうになってるか意味

分からないし、ちょっと空気読めない

言葉発してないかな?

「今から夕飯食べようと思ってね。

ちょっとした満の友人のお店で、

正装した方がいいと思ってね。」

湊はゆっくりと話してくれた。

「そうなの?」

不思議に思った。

私なんかがそんなところに行って

いいのかな?

でも、友達だし。

いいんだよね。

「鈴はいつものようにしてれば

いいんだからね。」

湊の手がポンと頭に触れて、

少しだけ嬉しくなった。

それできゅんってなった。

わたし可笑しくなったのかな。
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