黒猫眠り姫〔上〕[完]
綺麗な青色の車に乗り込む。
さっきと違うよ。
車内は、相変わらず湊と尚と一緒だった。
「湊?」
隣では湊がにっこりと私を見つめていて、
瞳に吸い込まれそうになって心臓が可笑しく
なりそうだった。
「言ったでしょ?鈴ってば鈍感だね。」
意地悪く笑う湊が魅力的に見えた。
でも、何が鈍感?
「ホントにこれだから鈴は困るよ。」
桐が助手席から話に加わる。
「何が困るの?
私何か困らせたの?」
それなら謝らなくちゃ。
「それが計算じゃないから厄介だな。」
満が煙草をふかす。
「計算?」
計算なら得意だけど?
それが何を困らせたんだろう?
「いつもに増して鈍感だね。」
尚が窓から外を見つめながら
喋る。
「何それ?
みんな知ってるのに私だけ仲間外れ?
ず、ズルイ。」
ちょっとジェラシー。
私こうなると厄介だよ。
拗ねるし、喋らなくなるから。
「鈴は可愛いねって話だよ。」
湊に頭を撫でられる。
「可愛くないのに。」
プイっと窓に写る景色をボーっと眺める。
「可愛いよ。そういうところがね。」
これってたぶん猫としてだ。
私は湊の猫だもんね。
「猫だから?」
その問いに自分でも答えなんて分かるだろう
と思ったから後悔した。
「ははっ。」
湊の笑い声にちょっとムッとなった。