黒猫眠り姫〔上〕[完]

それは、緊張もあったけど口の中にある

レモン味の飴が邪魔したからであって

結構、呑気に夜景を楽しんでいた。

「到着。」

桐が何だか楽しそうにそう言う。

「す、すごいね。」

そこはすごく綺麗な高級レストラン。

雰囲気からして大人っぽい。

何だか、私場違いな気がする。

車から降りると興味津々で歩き進める。

でも、急に手を引っ張られる。

「どこ行くの?」

湊はやっぱり私のことをわかっているようだ。

「気になって。」

足の痛みも忘れていたのが嘘みたいにまた

痛みが襲う。

「ほら、おいで。足大丈夫?」

湊の言葉は魔法みたいに私を安心させる。

痛みもすぐさま治まる。

「鈴ってば、ホントに自由人だね。

知らないところに一人で行っちゃ駄目だよ。」

尚がにっこりと笑う。

「おいっ。行くぞ。」

高級レストランに入るとホントに自分が

場違いな気がして湊の後ろから離れられなくなった。

綺麗なお姉さんに話しかけられてる。

みんなそれなりにカッコイイとかだし、

私穴の中に入りたくなる。

でも、私は私らしくていいって言ってくれた

から湊の隣を歩くことにした。

「こんばんわ。」

「はじめまして。」

スーツを着た男の人に何度か声をかけられたものの、

湊がにっこり微笑んで何かを言っていたから

気にしないでおいた。

「笹瀬様。」

お店の人が満に話しかける。

ドキドキしながら早くご飯食べたいなと

思いながらお店をじっくりと見回した。
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