黒猫眠り姫〔上〕[完]
ご飯は中々食べ応えのないものだった。
高級すぎて口に合わないというヤツだろう。
安上がりじゃないかと思われても可笑しくない。
でも好きではないといえど食べ残すのは
あまりにも失礼だと思いちゃんと食べた。
胃袋はかなり入った。
「ワインはあまり好きじゃない。」
満がそんなことを言ってのける。
金持ちの考えることは分かったものじゃない。
「それなら飲まなきゃいいじゃん。」
私と尚は未成年だからジュース。
湊と桐と満はワインを飲んでいる。
「確かにそうだ。」
満はグラスを机に戻した。
それから他愛無いことを喋って
このドキドキした場所から家へと
帰ることになった。
「このワンピース?」
貰ってしまっていいのだろうか?
「貰ってやって。鈴に合うものを
頼んだんだから持ち主は鈴がいい。」
満はそういうと頭を撫でてきた。
「それじゃあ貰う。」
遠慮ないのは気を使いたくないから。
気を使うと失礼なのも分かってる。
「湊着いたぞ。桐は降りるのか?」
ほろ酔いの桐は窓を全開にして風に
あたっていた。
湊はというと眠そうだ。
尚は先に送ってもらっていたので
もう居ない。
「桐どうするの?」
湊はすでに車から出ていて桐の返事を
待つ。
「今日は帰るわ。」
手を挙げる桐に手を振って外に出ると
蒸し暑くなった。
梅雨の時期はこれだから困る。
厚くてジメジメしてて気分が優れない。
湊に手を貸してもらいマンションに入った。