黒猫眠り姫〔上〕[完]
「ホントに可愛いから困るんだ。」
耳元に湊を感じた。
「フラフラするし。」
湊の顔がドアップで顔が赤くなった。
こんなに近くで見たことがあっただろうか?
「フラフラするって?」
「どこ行ってもいいけど、ちゃんと戻って来て。」
「え、うん。」
「鈴が悪いんだよ。」
「えっ!?」
「可愛い顔ばっかりするから。」
「そんなのしてない。」
「無自覚にも程があるよ。」
「・・・何それ。」
「自覚持ってくれないと困るよ。」
「・・・・・・・」
「鈴は可愛いんだから。」
頭を撫でる湊の手がぎゅっと私の手首を掴む。
「鈴?」
「何?」
湊の微笑が魅惑的で見つめてると逸らしたくなる。
「ちゅーしていい?」
言葉を失って湊を見つめる。
「もう知らないよ。」
湊はにっこり笑うと私に顔を近づけた。
咄嗟に目を瞑る。
目を瞑らないと湊の顔がドアップすぎて
焦るから。
その瞬間、唇から温かい感触を感じた。
これがちゅーってヤツ。
初めてのことに頭がパニックを起こした。
触れてる唇がこんなに熱くなるとは思わなくて、
テレビや映画の世界の話だとばかり思ってて
まさか自分がこんなことになるとは驚いた。
それは初めてなことなのに抵抗する気は
起きなかった。
湊は、ホントにあたしを猫だと思ってるのかも
しれない。
こんなの普通はしないと思う。
猫ってこんな幸せな生き物なんだ。
そう思えた。