黒猫眠り姫〔上〕[完]

目を覚ましたら夢とかそういうふうにはならないよね?

これはホントにあったことなの?

「鈴、可愛い。」

目をパチパチする私。

目の前には湊が居る。

ドキドキ心臓が可笑しい。

「湊。」

湊にされたキスに戸惑うのはあたしだけみたい。

湊は日常茶飯事なんだ。

普通の挨拶するようなことなのかもしれない。

あたしも普通だと思わなくちゃだ。

「何?」

ふわっと笑うあたしのご主人様。

この笑顔を守るためならあたしは何だって

出来る気がする。

「もう一回。」

おねだりするのは初めて。

人生初のおねだり。

それはすごく緊張して目を瞑ってしまった。

湊の顔を見ていたかったけど、緊張のあまりに

目を見れなくて、こんな大胆なことをする自分を

疑いたくなる。

あたし今日大胆になる毒キノコでも食べたのだろうか?

自分が自分じゃないってこういうこと?

あたしは誰に操られてるんだ?

ドキッっとする目を瞑ってても湊の存在を

確かに感じる。

もう夏だっていうのに。

クーラーが利きすぎてるせいか温もりが

恋しくなる。

「鈴、」

湊の手があたしの髪に触れる。

梳くように触れる湊に心臓の音が聞えそうだ。

「そんなのどこで覚えたの?」

湊がどんな顔でそれを言ってるのか気になった。

どこで覚えたというのは何?

何を覚えたのだろうか?

「そんな顔でおねだりしないで。」

湊は困ったように笑う。

嫌だったかな?
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