黒猫眠り姫〔上〕[完]
湊は無理にしたのかな?
それならあたしは望まない。
湊を困らせたくない。
「湊、ごめんなさい。」
お願いだからそんな顔しないで?
あたしどうしたらいい?
どうしたら湊は幸せになれる?
あたし頑張る。
頑張るからそんな顔であたしを見ないで?
「鈴、本気でちゅーするよ?」
魅惑的にわたしを魅せる湊にドキッとした。
女の子だからこう見えてあたしは立派な
女の子。湊には猫だと思われてるけど、
猫でも女の子。
男の人っていうのを感じる。
「湊って男だね。」
今思うんだ。
湊も立派な男の人。
こんな関係でもいいと思うけど、
湊はいつまであたしを必要としてくれる?
それだけが不安だよ。
もういらないにならなきゃいい。
「当たり前でしょ。」
その大きな腕の中あたしは湊に飼われてる身。
あたしのご主人様はとても温かい人。
瞳の奥は冷たくて何を思ってるのかも
分からないときがある。
でもね、あたしのご主人様はあたしを
大きな温もりで抱きしめてくれる。
その温かさがいつも当たり前だと思ってる。
もうなくちゃいけない存在。
もう一度強く抱きしめられたまま、
離されて瞳がぶつかる。
合図も何もなしにご主人様からの本気の
ちゅーってやつをされた。
ホントに愛情を注がれてる。
こんなに幸せな猫はいないだろう。
私は、愛情ってやつを知った気がする。