黒猫眠り姫〔上〕[完]

黒猫は不吉だからそう呼んでるのかなって

思うことがある。

私が不吉だからそう呼んでる気がした。

「全然可愛くないよ。」

黒猫のどこが可愛いって言うんだ。

「鈴って学校では黒猫眠り姫って

呼ばれてるんでしょ?」

「えっ。うん。」

「王子様って誰だろうね?」

眠り姫っていってもよく寝てるからだと

思う。

「そんな意味はとくにないと思うよ。」

「どうして?」

「よく寝てるから。」

「眠り姫の話は知ってる?」

「うん。」

眠り姫そんな童話いつか夢見る子ども

時代に読んだ気がする。

「眠り姫って王子様が居ないと

ずっと眠ったままなんだ。」

「そうだね。」

知ってるよ。

眠り姫ってずっと王子様が来るまで

眠り続けるっていうそんな話。

「鈴にはそんな王子様が居るのかも

しれないね。」

「居ないよ。」

「どうしてそう思うの?」

だって、私気まぐれな猫だから、

きっと待ってられない。

「眠って待つのは気分次第だと思うから。」

眠って居られるならいいよ。

でも、来ない王子様待つほど夢見てない。

「そうかな。」

「ん?」

「鈴はきっと待ってくれると思うよ。」

「・・・・・・・」

「寂しがりやだからきっと待ってると思う。」

そんなこと分からないよ。

王子様なんて私には居ない。

迎えに来てくれるぐらい愛されるわけない。

孤独死で生涯を終わらすだろう。
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