黒猫眠り姫〔上〕[完]

「湊って作家だよね。」

文才のある湊は童話なんてよく読むのだろう。

「そうだけど?」

「文章考えるのって難しいの?」

きっと彼にとったら簡単なことだろう。

それを仕事にしてご飯食べていってるんだから。

「それはその日の自分次第。」

「そうなの?」

「その日の自分の想像力って大切なんだよ。」

「湊の頭の中を分析してみたい。」

「そう?」

「うん。」

「面白くないよ。」

「きっと面白い。」

そう言ってにっこり笑う湊の隣を歩いて

居られる自分はやっぱりすごく幸せすぎる。

「鈴、こっちおいで。」

手を差し出す湊に引き寄せられるように

手を伸ばした。

「湊、どうしたの?」

「鈴不足だったような気がして。」

「・・・・・・・・・・」

「鈴に力を貰ってるみたい。」

「湊に力吸い取られてる。」

ポンポン背中を叩く湊に

道端で何やってるのって

いうのも変だった。

湊のハグには最近抵抗も全く

しなくなってきた。

「湊のハグって2種類あるんだけど・・」

それを知ってる?

湊はきっと無意識なんだろうね。

無意識でそうしてるんだと思う。

「そうだった?」

「うん。」

やっぱり知らないでしょ。

これは多分、私しか知らないことだと思う。

湊はよくハグするけど、男の人にはしないし、

女の人もあまり見たことがないから想像だけど。
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