黒猫眠り姫〔上〕[完]
いつも気にしないフリをするのは痛いのを
無視してるから。
「お願い。」
離されたらもうすぐに諦めて、見ないフリして
遠ざける。
それを人は突き放したり、寄ってきたりって
言うけど、ホントは突き放されるのが怖いだけで
自分から突き放すことで自分の心を守ってきた。
「いいよ。」
暗闇の夜道私は1人じゃないってことに
どれだけ勇気を貰ったか分からない。
1人がどれだけ寂しいモノだったか、
今になったら考えられる。
昔は寂しいって感覚に麻痺してた。
ホントは寂しいくせに寂しくないって
どこか自分を言い聞かせてた。
「湊、1人じゃないっていいね。」
初めてかもしれないよ。
いくら求めてきたモノでも欲しいと
思うだけで手に入れることが怖かった。
いつか要らないものにされるのが怖くて、
1人で居ることを好み、誰も受け入れないように
することが自分の支えだった。
「もう1人にはさせないよ。」
そうやって言ってくれる人が居るって
だけで生きる希望が見える。
諦めずに自分も欲しいものに手を伸ばす
ことが出来る。
もう要らないって言われなくて済むんだって
思うと前よりも人を好きになれそうになって、
「うん。湊が居れば怖くない。」
どんな闇をも打ち消すことが出来る気がするんだ。
1人に怯えて苦しむことも無い。
2人ってだけで充分な気がする。
この世界に2人ぼっちにされてるみたいで
湊を見失いたくない。
「鈴?」
もうそろそろ自分と決着つけたい。
過去に縛られることで今の関係が
維持できなくなるぐらいならどうにかしたい。