黒猫眠り姫〔上〕[完]
「湊、コンビニ行こう?」
いつか自分から進めるぐらい強くなりたい。
自由を好み、寂しさに怯えることのない
猫みたいになりたい。
私自信が弱いままで守られていることが
当然だって思いたくない。
誰にも守られなくても強く生きれる
強さが欲しい。
湊ばっかりにはさせたくないの。
「うん。」
湊に恩返しするためにも傷つかないように
自分を守る。
「もうすぐで海だね。」
「そうだ。仕事終わるかな?」
湊が大切に思ってくれるように
私も湊が大切。
それはご主人様と猫の関係だけど。
大きな繋がりであることには変わらない。
「湊、仕事大変なの?」
「しばらく徹夜が続きそうかな。」
「湊疲れちゃいそうだね。」
「鈴が癒してくれるでしょ?」
手を繋いで歩く夜道はただのお散歩
のように思えるけど、湊が居るだけ
いつもとは違って見える。
「何したらいい?」
どんな我儘でも聞いてくれる湊
を私は癒せるか不安でどうしていいか
分からない。
「何もしなくても鈴は癒しだから。」
「えっ?」
「ただ傍にいてくれればいいよ。」
その言葉に泣きだしそうになった。
どんな綺麗なものよりもずっと欲しかった
その言葉をご主人様に言われた。
誰も必要って言ってくれなかった
から諦めていたその言葉を湊は
私に向けて言ってくれた。
何よりも嬉しいその言葉に
どれだけ嬉しかったか湊にはきっと分からない。
ずっと悲しくて寂しくて、
気付いたらそれは脆いものだった。
愛の言葉を告げるよりもそれは私にとって
どんな言葉よりも嬉しいものだった。