黒猫眠り姫〔上〕[完]
「何か罪悪感。」
「何で?」
湊は、初めから私を心配してくれてた。
「今まで好奇な目でしか見られなかった
からきっと人自身信じられなくて湊にも
そんなふうに思われてると思ってた。」
いつでも私は人から好奇な目で見られた。
学校でも出かける先でも。
「それは仕方なかったことなんじゃない?」
「湊は優しいね。」
仕方ないって言ってくれる。
「鈴のいいところは僕が知ってるからね。」
「湊が初めてだったんだ。」
「ん?」
「湊が初めて私に話しかけてくれた。
私の心配してくれた。
好奇なものを感じさせなかった。
ただ、普通に心配してくれた。」
だから、この人には心開ける
ように思えた。
いつでもそんな人が居てくれるんじゃないかって
探してたような気がする。
「そうだったんだね。」
「うん。」
「良かった。」
「えっ?」
「鈴を見つけて声かけといて良かった。」
「ん?」
「そうじゃないと鈴とこうやって
暮らせなかったなと思うから。」
「私と暮らせて良かったの?」
「良かったよ。」
湊の手からは温もりが伝わる。
「鈴を見つけたのが最初で良かった。」
「私は湊に見つけてもらえたのが良かったよ。」
きっと雨に打たれてられるのもそう長く
なかった。
息が詰まるようなあの家から飛び出した
時からもうどうでもよくなってた。
だから、死を覚悟してた。