黒猫眠り姫〔上〕[完]

「湊にばっかり我儘言えない。」

「どうして?」

どうしてって言われても困る。

ただ単純に嫌われたくない。

我儘でめんどくさいヤツだって思われたく

ないんだから仕方ないじゃん。

「鈴の我儘ならどんなことでも叶えてあげたい

って思うけど、鈴は俺に頼れないの?」

そんな寂しそうに言わないでよ。

そんなのズルイ。

私がその顔に弱いの気付いてるなら

相当な悪党だ。

「持ってくれる?」

手を前に突き出す。

こんなの初めて。

自分から人に言うのは湊が初めて。

「喜んで。」

ふわりと笑う湊にときめく。

多分、これは朝食べたハンバーガーのせいだ。

胸やけ起こすほどだったんだ。

脂っこいとは思ってた。

「鈴、手貸して?」

無言で手だけ差し出す。

「鈴って仕草がホント猫っぽいね。」

「そう?」

手を繋ぐことが普通になりつつある。

「たまに思うんだけど、寝方とか

フラフラ好きなことしてるところとか

気になるとすごい気にしてるところとか

猫好きには堪らなく可愛いなって思う。」

「湊って犬より猫派?」

「鈴は?」

「私は犬派だけど?」

「だからかもね。」

「えっ?」

「犬好きは猫っぽい人が多いんだって。」

それじゃあ、湊は犬っぽいの?

何か違う。

湊は飼う側だな。

そうじゃないと変な感じ。
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