黒猫眠り姫〔上〕[完]

「湊はどっちでもないね。」

「そう?」

「うん。私の希望では湊は飼い主であって欲しい。」

「ふふっ。鈴ってホント可愛いよね。」

片手で頭を撫でられてきゅんとなる。

ホント湊ってタイミングいい。

いつもタイミングよく現れたり、

タイミングよく言葉かけてくれたり、

私にはなくちゃならない存在。

どこに居てもきっと湊が私の一番。

「それじゃあ、桐も待ってることだし

行こうか。」

ぎゅって繋ぐ手が強くて、

湊に身を預けた感じだ。

サンダルを履くと夏の気分。

いつもインドアの夏を過ごしてたから

今年は少し違う。

私の知らないところに行く。

興味はある。

でも、知らない土地に行くっていうのに

不安にならないわけはない。

「遅いぞ。」

下に降りると桐はもう車を回してた。

「早く乗れ。」

たまに思う。

湊と桐ってすごい仲良しな気がする。

乗れって言う前に湊は乗ろうとしてた。

そういうのって以心伝心ってヤツなのかも

しれない。

「桐、安全運転してね?」

ホント心配。

この前、病院に行った時、

この世のスピードとは思えない速度

出して走ってたと思う。

「まかせろ。」

そういうのが心配なんだけど?

わかってないよね。

桐ってたまに馬鹿さが出る。

でも、そういう桐嫌いじゃない。

むしろ、好き。
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