黒猫眠り姫〔上〕[完]

「ほれ、行くか。」

桐がそう言ってから、すぐに陣取りしたところに行く。

「暑い。」

パラソルの下から全然動かないで、

ボーっとしてる。

海は、泳ぐところらしい。

私、泳いだことないから無理。

それに暑くて出れない。

「鈴って白いもんな。」

尚が仕方ないなって感じに言う。

そんな尚はもう一度海に入ってきたらしく、

髪が濡れてた。

湊と一緒にパラソルに居たから。

さっきまでのほほんってしてた。

砂遊びで私は十分。

楽しいって思ってる。

「焼けたら痛いだろうな。」

「焼けると痛いの?」

そういうものなのか?

初めてだから分からない。

どうやら、海に来たら焼けるらしい。

「鈴、一緒に昼メシ買いに行くか?」

桐が誘ってくれた。

私がずっとここに居たのを気にかけてる

っぽい。

「いいよ。」

「鈴、桐から離れちゃ駄目だよ?」

「うん。」

「行ってらっしゃい。」

にっこりと微笑む湊から離れて、

「桐どこ行くの?」

桐のシャツの後ろを引っ張る。

手を繋ぎたいところだけど、

桐はここ引っ張っとけって言うから、

言うことを聞いてる。

「何食いたい?」

「うーん。」

何があるか分からないんだけど?

海に食べ物は売ってるの?

スーパーがあるの?
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