黒猫眠り姫〔上〕[完]
一瞬起きたこと全てに理解できず固まったまま、
ポカーンとした表情を崩すことはなかった。
「俺も男だから。」
そう言った満は桐たちの方に向かっていった。
それは完璧にキスされたんだって思う。
行ってから気がつく。
唇に手を当て悶々と考える。
私、嫌だったのかな?
それこそ理解不能。
でも、とくに気にせず、
座りなおしてからまたダイブするように
体勢を崩した。
よく分からない。
分からないから考えない。
それでいいのかはまた別な話。
それからだって、全く変わらなかった。
満こそ、気まずくってことはなく、
これが普通なのかもしれないと考えるようにした。
お昼過ぎの時間、桐に連れられて海にやってきた。
泳いだことないからという理由なのか、
浮き輪を装着させられた。
水着姿はそこで初めてお披露目だったの
だが、
「鈴・・・桐から離れないでね?」
湊は海に入るつもりはないらしく、
にっこり笑ったままそう言った。
「桐、引っ張って。」
浮き輪の紐を桐に預けて、
後を追いかけるようについて行った。
初めて海という中に入った。
海の良さってのを知った気がする。
桐が近くに居るから安心して、
海にプカプカ浮かんでられた。
プールにも入ったことないから、
こういうのはすごく新鮮で経験
出来たことに喜びを感じた。
一生経験出来なかったら、
きっと後悔してるに違いなくて、
桐に誘ってもらえて良かったと
感動した。