黒猫眠り姫〔上〕[完]

一瞬起きたこと全てに理解できず固まったまま、

ポカーンとした表情を崩すことはなかった。

「俺も男だから。」

そう言った満は桐たちの方に向かっていった。

それは完璧にキスされたんだって思う。

行ってから気がつく。

唇に手を当て悶々と考える。

私、嫌だったのかな?

それこそ理解不能。

でも、とくに気にせず、

座りなおしてからまたダイブするように

体勢を崩した。

よく分からない。

分からないから考えない。

それでいいのかはまた別な話。

それからだって、全く変わらなかった。

満こそ、気まずくってことはなく、

これが普通なのかもしれないと考えるようにした。

お昼過ぎの時間、桐に連れられて海にやってきた。

泳いだことないからという理由なのか、

浮き輪を装着させられた。

水着姿はそこで初めてお披露目だったの

だが、

「鈴・・・桐から離れないでね?」

湊は海に入るつもりはないらしく、

にっこり笑ったままそう言った。

「桐、引っ張って。」

浮き輪の紐を桐に預けて、

後を追いかけるようについて行った。

初めて海という中に入った。

海の良さってのを知った気がする。

桐が近くに居るから安心して、

海にプカプカ浮かんでられた。

プールにも入ったことないから、

こういうのはすごく新鮮で経験

出来たことに喜びを感じた。

一生経験出来なかったら、

きっと後悔してるに違いなくて、

桐に誘ってもらえて良かったと

感動した。
< 343 / 344 >

この作品をシェア

pagetop