黒猫眠り姫〔上〕[完]
「私だけだったら良かったの、でも桐を
悪く言ったことは許せなかった。」
「うん。」
「桐のこと全くわかってなくて酷いこと
言うから悔しくて。」
「うん。」
「だから、言葉が勝手に出てて、傷つけた。
どんなに悔しくても、人を傷つけるのは、
だめだって分かってたのにとまらなくて。」
涙が頬につたっていくのが自分でも分かる。
「うん。」
「でもね、悪いことしたなんて思ってないの。」
「うん。」
「桐が気づかないでいればいいな。そう思って
たけど今じゃ、それも出来そうになくて、
今日は本当に桐に酷いこと言っちゃいそうで
帰れなかった。」
「うん。わかったよ。鈴の気持ちは分かったよ。
でも、僕も桐も心配してたし、鈴が悪いなんて
思ってないから。だから、泣かないで、鈴の
涙見ると桐責任感じるよ。鈴は、可愛い顔
してるんだから泣いてるより、笑った方が
いい。」
そう言って笑うんだから参る。
その笑った顔が、自然と涙を止めさす。
袖で涙を拭ってくれるもんだから嬉しく
なった。