黒猫眠り姫〔上〕[完]
「湊、ありがとぅ。」
あまり大きな声で言えなくて、小さい声
で言った。そんな言葉も湊は、いつも拾
ってくれる。何も言わなくても、ちゃんと
分かろうとしてくれる。やっぱり、涙は、
とまらなくて湊の心配そうな顔も涙を誘う。
いつぶりなんだろう。人の前で泣くのは。
もう何年も泣いてない上に、人に涙を見せる
ことが嫌いだったため、もうずっと泣いてない。
だから、何でかわからないけど、無償に泣きた
くて涙だけが頬をつたっていく。
「湊ごめん。なんでかわからないけど、涙が
とまんない。」
「うん。いいよ。泣きな。俺は、ここにいる
から。泣いていいよ。」
「うん。・・・」
いきなり僕から俺に変わった湊に男らしさ
を感じた。
湊は、いつだって優しくて、まだ、会って
何日も経ってないのに私を見捨てようとは
しなくて、その優しさが胸に染みた。
人にこんなに優しくしてもらうことが
あまりないからか、湊の優しさに甘えて
しまう。私は、湊に何もしてないし、
迷惑ばかりで、困った猫だと思う。