黒猫眠り姫〔上〕[完]
飼い主に迷惑をかけてばかりで、捨て
られてもおかしくない。湊に何か返せ
てあげられたらいいな。明日は、湊が
好きなチョコレートを奮発して買おう
と心に誓った。だけど、湊と出会えた
ことに感謝だ。きっと、湊に出会って
なかったら、今もきっと泣くことなんて
できなかったし、今生きてるかもわから
ない。死ぬとかそんなことじゃなくて、
家から飛び出したとき本当はもう帰れな
いことぐらい知ってた。
あの日も今日みたいに雨が降ってて、
なんとなく、家に帰ることはできなくて
とにかくあの家には、もう居たくなくて
気づいたら家から飛び出していて行き先も
全く考えずにびしょ濡れになっていた。
もうずっと前から、私に居場所はなくて、
人には白い目で見られる。親のことで
見られる。何にもしてないのに白い目で
突き刺さるような目で私を見る。
だから、もう心なんていらないと思った。
あの日も、雨の中で傘もささない私に
声をかけたのは湊以外誰もいなくて、
みんな行きかう人は私を見ても、声
なんてかけなかった。