黒猫眠り姫〔上〕[完]
だから、私の存在に気づいてくれた君
に本当は嬉しかったんだと思う
でも、素直になんてなれない私は、冷
たい言葉で突き放した。
雨それは、空が泣いているように見え
て自分の変わりに泣いてくれる唯一の
安らぎなのかもしれない。雨を見ると
空が悲しそうな気がしていた。
あの日の雨もきっと泣けない私の変わ
りに泣いてくれたのかもしれない。
心はまだ空っぽに近いけど、湊も桐も
居るから、なんだか寂しくない気がし
た。雨は、まだ止む気配はしなくて
振り続ける。まるで、私の頬に流れ
続ける涙のように。
あの日から、雨の日は私の特別で、
自分の涙を見せられる湊も特別
だったのかもしれない。
でも、そんなこと、全くわからない
私はかなりの間抜けな気もする。
(雨と涙なんか似てる。)
(鈴は、雨のイメージが濃い。)
(えーっとそれってどういう意味?)
(いやーなんだろう?)